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大阪高等裁判所 昭和47年(ラ)189号 決定

抗告人 小野田秋英(仮名)

相手方 小野田幸夫(仮名)

主文

原審判を取り消す。

本件を大津家庭裁判所彦根支部に差し戻す。

理由

一、本件抗告の趣旨は主文同旨であり、その理由は別紙記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

家庭裁判所が準禁治産を宣告するには、本人の心神の状況について、必ず医師その他適当な者に鑑定をさせなければならないことは、家事審判規則三〇条によつて準用される同規則二四条に定められているところであつて、本人において鑑定を拒否するなど鑑定を不可能にする特段の事情が存しない限り、鑑定を実施すべきものである。本件記録を調査してみると、医師由利至作成の診断書が存するだけで、原審において医師その他適当な者に抗告人の心神の状況について鑑定をさせた形跡および右特段の事情を認め得る資料はみあたらない。そうすると、原審判には家事審判規則三〇条二四条に反する違法が存するものというべきであつて、原審判は取消しを免れない。ところで、準禁治産宣告の審判を本人に告知することを要しない旨の特別規定は存せず、かつ、保佐人は右告知を受領する権限は有しないし、家事審判法一三条の趣旨よりかんがみて本人に審判の告知を要するものと解すべきである。即時抗告期間が審判の告知を受けた日から進行することは家事審判規則一七条により明らかであるが、原審において原審判を抗告人に告知したことを認めるに足る資料は存せず、当審において提出された抗告人の上申書によると、抗告人は原審判がなされたことを昭和四七年五月一二日に抗告代理人より聞き知つたことを認め得るし、仮にその日から抗告期間が進行するとしても、一四日以内に本件抗告申立をしたことは本件記録上明らかであるから、本件抗告は適法になされたものと認められる。

よつて、本件抗告は、その余の点につき判断するまでもなく、理由があるので、原審判を取り消し、本件を大津家庭裁判所彦根支部に差し戻すこととして主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 長瀬清澄 裁判官 岡部重信 小北陽三)

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